自分だけが責められている!人間恐怖症や自己肯定感低下を招く相貌失認の深刻な弊害
相貌失認の人はその独特な見え方ゆえに、社会生活・人間関係・成長過程に深刻な弊害をもたらします。
その独特な見え方とは、「注目した部分だけが拡大されて、視界いっぱいに広がって見える」という見え方なのですが、そのことが原因で人相・表情・周囲の風景が認識できません。
それゆえ日常会話のニュアンスや周囲の状況も把握できません。
そのため、自分だけが責められていると感じる場面が多く発生し、人間恐怖症や自己肯定感低下を招きやすくなります。
そこで今回は、相貌失認の人が自分だけ責められていると感じるのは、どのような場面なのか、3つの例を挙げてご紹介させて頂きたいと思います。
自分だけが責められていると感じる場面
①周囲から聞こえてくる言葉
例えば「バカみたい」という声が不意に聞こえてきたとします。
その場合、相貌失認の人は周囲の状況が見えていないため、周囲から聞こえてくる悪口はすべて自分に向けられた言葉だと信じてしまいます。そのため周囲は敵だらけだと感じてしまいます。
②明らかに自分に向けられた言葉
例えば「ジャマだよ」と誰かから言われたとします。
その場合、相貌失認の人は周囲の状況が見えていないため、ジャマなのは自分だと誤解してしまいます。そして激しく落ち込みます。しかし実際ジャマだったのは自分ではなく、荷物のことだった、ということがありました。
日本語は主語抜きで会話をすることが多いため、聴覚に頼っている相貌失認の人にとって、このような誤解が頻繁に発生します。
③教師の言葉
例えば教師が「おまえらたるんでるぞ!もっと頑張れ!」とクラス全員に叱咤激励をしたとします。
その場合、相貌失認の人は周囲の状況が見えていないため、教師が「みんなに向かって話している」という状況が理解できません。そのため自分だけが叱られたような気分になり、激しく落ち込みます。
自分は一生懸命やっているのに、「もっと頑張れ」といつも言われてたら、「まだまだ頑張りが足りないのだ」と感じてしまい、真面目な性格の子の場合は、どんどん自分を追い込んでいきます。
そして限界まで頑張っていても、もっと頑張れ」と言われ続けるため、もうこれ以上頑張れない自分をダメな人間だと思い込み、自己肯定感が低下していきます。
あとがき
相貌失認の人はその独特な見え方ゆえに、周囲からの言葉に敏感に反応し、そして常に自分が責められているように感じます。
そのため成長するに従って、人間恐怖症や自己肯定感低下を招く恐れがあり、さらには鬱やパニック障害などの精神疾患を引き起こす可能性もあります。
ですが逆に言えば、人相や表情や周囲の状況が分らないということは、相手の状況や心理状態を推測する習慣もない、ということです。
(言葉で説明を受けた場合は別ですが)
そのため相貌失認の人は、幼いころから自己中心の世界で生きています。他者との関わり方を学べません。
つまり周囲の状況も見えず他者観察もできないため、「自分の感じたこと」が全てになります。従って自分が「責められた」と感じた場合、それが自分の中での真実として心に蓄積されていきます。
すると世の中は妥協を許さない恐ろしい世界になります。
さらに相貌失認の人の独特な言動により、実際にいじめられてしまう可能性もあります。
従って、人相・表情・周囲の風景(状況)が分らないということは、社会生活・人間関係・精神状態において、深刻な弊害をもたらすことになるのです。
ご精読ありがとうございました。